株式会社幸工務店

何の変哲もない、濡縁。

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既存ウッドデッキ
ウッドデッキの改修工事の依頼をうけ、現調へ。
聞くと、10年ほど前に犬のためのウッドデッキを作ってもらったのだとか。
10年でボロボロ…
パーゴラは腐って落ちかけ、床は至る所で抜け落ちていました。
材はレッドシダーでしたが、犬のための柵が悪さをしたのか、風通しが非常に悪い状態。
塗装も塗りつぶしタイプのもの。
仕事は丁寧でも、これでは10年ほどで腐るのも頷けます。

せっかくの広い庭を、使えないウッドデッキに占領され、普段の庭でのティータイムは
玄関先に設けたティーテーブルという、なんともかわいそうな状況でした。

すべて撤去のうえ、ご提案させていただいたのは「濡縁」

濡縁

総ヒノキ造り、古色塗りで、シンプルな濡縁。
何の変哲もない、濡縁です。

ただ、僕個人的に濡縁というものに思い入れがあるのです。

尾道の斜面市街地・長江でまちづくり活動を積極的にされておられる、防災士・香本 昌義さん。
以前、建築士会のイベントで講師をつとめていただき、たいへんにお世話になった方です。
彼に言われた言葉がずーっと脳裏に焼き付いていました。

『縁側のある家をつくってください』

どういうことかというと、縁側が地域コミュニティを形成する一つのキーワードになるんだとか。
どこか閉鎖的で殺風景な外溝が少なくない昨今ですが、田舎に行くと近所の方や出入りの方が玄関先や庭先、塀越しに話すこともちらほら。
子供が帰宅しても、近所の方が地域ぐるみで見守る、ということが大切だと訴えていらっしゃいました。

その核にもなりうるのが縁側という存在。
誰かがそこにいる、という安心感。
まぁ、一杯お茶でも、と自然に会話がはずむということにもつながりましょう。

そんな、彼との約束を果たしたいと、心のどこかで思っておりましたところ、このお客様が「濡縁」の提案に大賛成してくださいました。

ほんとうに何の変哲もないものですが、香本さんとの小さな約束を果たせた気がしてほっとしているところです。

「まぁ、お茶でも飲んでお行き。」
と、ほころんだ笑顔の中心に濡縁がある。
そんなことを思い浮かべ、何の変哲もない仕事こそが、我々町場の工務店の役割だと改めて思った次第です。

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