2017年を迎えました。
年始,始業された方も多いのではないかと思います。
さて,冬は寒い。
これ,当たり前の話ですが,今年はやけに暖かい日が続きますね。
朝の気温は低くても,日中の外気温が12~13℃になることも少なくありません。
写真は,2017年1月3日の福山市内の辻堂の写真です。
お昼ころですが,暖かそうな写真でしょ?
このお正月,自宅で南面の窓のカーテンを全開にしていると,暖かい日差しが窓を通して床面や内部の壁面,家具などをあたためてくれました。
昼過ぎの室内温度計は22.5度。
暖房なしで,です。
陽のあたる床面はもっとあたたかかったと思います。
これを「ダイレクトゲイン」と言います。
太陽の角度が地域と季節によって違うことは皆さんご存知でしょう。
広島県福山市の夏至(2016年は6月21日でした)の南中高度は約79.1度。
また,冬至(2016年は12月21日)の南中高度は約32.3度。
で,今回は冬の話。
例えば,1階リビングの南面に幅1.6m×高さ2.0mの引違いサッシがあったとします。※写真 1階のハキダシ
まず,この窓から逃げる熱量は,サッシの熱貫流率から計算できます。
ここ十数年ひたすら取り付けられた「アルミサッシ+ペアガラス(以降“APG”)」の場合,熱貫流率U値は4.07(W/㎡・K)。
ひと昔前の,「アルミサッシ+単板ガラス(以降“ASG”)」の場合だと,熱貫流率U値は6.51(W/㎡・K)。
(※写真のような「樹脂サッシ+LowE複層日射取得型(以降“JLG”)」の場合だとU値は2.33(W/㎡・K))
熱貫流率とは,室内外の温度差1℃のとき単位面積あたりの逃げる熱量のことです。
ではこのサッシから冬の暖かい日差しのときにどのくらいの熱が逃げるのか計算してみます。
このサッシの面積は「1.6×2.0=3.2㎡」
外気温が12℃で室温が22℃とすると,温度差は10℃。
時間は朝9時から夕方16までの7時間とします。
カーテン等を開け放した場合として計算してみます。
APGの場合,4.07W/㎡・K×3.2㎡×10℃×7hr≒911W
ASGの場合,6.51W/㎡・K×3.2㎡×10℃×7hr≒1,458W
JLGの場合,2.33W/㎡・K×3.2㎡×10℃×7hr≒521W
結構な熱量が逃げています。
ASGの場合とくらべて,JLGは約1/3で済んでいます。
今度は,冬期の窓からの熱取得を計算してみます。
※やや専門的なので,難しいと感じた方は結果のみご参照ください。
気象庁のデータから,広島市の1月の全天空日射量(福山市はありませんでした)は,2006年から2016年の平均値で2.65kWh/㎡(→2,650Wh/㎡)です。
これは,水平面1㎡あたりが受ける日射量です。
これに,ガラスの熱透過率を加味してそれぞれのサッシを計算してみます。
■窓面の暖房期日射熱取得量mH(W/(W/㎡))=窓面積A×日射熱取得率η×窓の補正係数fH×方位係数νH
A=3.2㎡
η=APG:0.79,ASG:0.88,JLG:0.62
fH=APG:0.832,ASG:0.874,JLG:0.817
νH=0.815
これをあてはめて計算してみます。
APGの場合,3.2㎡×0.79×0.832×0.815≒1.71W/(W/㎡)
ASGの場合,3.2㎡×0.88×0.874×0.815≒2.00W/(W/㎡)
JLGの場合,3.2㎡×0.62×0.817×0.815≒1.32W/(W/㎡)
これは,水平面における全天空日射量1W/㎡あたりの日射熱取得量のことです。
これに全天空日射量の値2,650Wh/㎡と7時間をかけてあげると,一日の窓からの日射取得量が算出されます。
APGの場合,1.71W/(W/㎡)×2,650Wh/㎡×7hr≒31,720W
ASGの場合,2.00W/(W/㎡)×2,650Wh/㎡×7hr≒37,100W
JLGの場合,1.32W/(W/㎡)×2,650Wh/㎡×7hr≒24,480W
ものすごい熱量が窓から得られるということがわかります。
窓から逃げる熱量など簡単に取り返してしまいます。
また,日射取得に関しては,高性能ガラスは若干不利だということも見て取れます。
【結論】
冬の晴天時には,しっかりカーテンを開けてたくさん太陽の熱を室内に取り込みましょう。
その熱は,床や壁,家具などに蓄熱して,夜間の冷え込みを和らげてくれます。
あくまで,1月の日中,雲一つない晴天で太陽光が燦々と照っているという好条件でのシュミレーションです。
しかし,冬の日射は「ただ」「無料」なのですから,これほどエコなものはないわけです。
あ,もちろん陽があたらない時間や夜間は,カーテンやブラインドをしっかり閉めてください。
熱が逃げるのをずいぶんと妨げてくれますから。