株式会社幸工務店

「遊び」と「心地」

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ジェリーの扉
もうかれこれ8年ほど前のリノベーションでの話。

高校の先輩が、某ハウスメーカーの中古住宅を購入され、内部をフルリノベーション。
かさみそうな工事費を抑えるためには自ら塗装や左官を買って出る彼女。
天井にも壁にも床にも、ナチュナルな素材をふんだんに使用し、「心地」を求めることにたいへん意欲的でした。

居心地、触り心地、住み心地…

ご主人やお子様との普段のやりとりをお伺いしていると、これはきっといいものができるな、と頑張ったことを思い出します。

小さな寸法にこだわり、計画変更や素材変更も幾度重ねたことか。
こちらも、もう利益など度外視。
※これだから、いつまでたっても…
最後にはご家族皆巻き込んで、楽しんでやっていたなぁと、僕にとっても思い出深い案件でした。

大好きな建築家・中村好文さん(レミングハウス)の言葉に、「とっておきの居心地を家の中に…」
というくだりがあるのですが、一部抜粋します。

~「心地」というのはなかなかいい言葉ですね。
「住み心地」にしても「座り心地」にしても、ちょっとほかの言葉に置き換えられないニュアンスがあります。
そう、そう、「夢見心地」なんて言葉もありました。これなんかも、ほかの言葉にするのはとても難しそうです。ところで、「心地」のつく言葉で私が一番好きなのは、やはり「居心地」です。居心地のよい場所にいたいという思いは、居心地のよい空間を作りたいという欲求に真っ直ぐに結びついて、いつのまにか私は住宅建築家になっていたのでした。
建築の設計は、工学的な専門知識を身につけ、経験を積み、建築的な思考を論理的に積み上げたり深めたりすることである程度のところまでいけるものですが、こと居心地を生み出すことに関しては、そういう勉強がまったく役に立ちません。必要なのは動物的な勘だけ。立派な理論も理屈も通らないだけに、建築家のセンスと本当の力量が露呈するところです。~
『住宅読本』より

どうですか。
とても腑に落ちる、いい内容だと思いませんか?
もちろん、プロとして理論と理屈、専門知識を日々研鑽することはとても大切です。
しかし、居心地をもとめ、遊びココロを失わない。
僕の日々の建築活動の根源となる、とても大切なこころが、この現場においてあります。

それが、この「ジェリーの扉」です。
階段下を利用した1階のトイレ。
解体をしたときに生まれたわずかな空間を、彼女も僕も見逃しませんでした。
3時の休憩や、幾多の打合せのなかで、いつの間にかここへアニメ「トムとジェリー」に出てくるねずみのジェリーの住処を作ろうと決まっていました。
そうと決まれば、技術的にも予算的にも、たいしたことはありません。
現場の端材で、扉をつくり、その扉が引き出しの前板となり。奥に長い引き出しが完成したのです。
もちろん、たいして収納はできません。

だけど、この気持ち、この心、この遊びが、居心地のいい空間へとつながると確信しています。

まだまだ、遊ぼう。
遊ぶには、色んな物を色眼鏡なしに見よう。

そんな風に改めて思った次第です。

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